それは幻想、それとも希望
内臓なんて綺麗なものじゃあないかと言えば皆一様におかしな顔をした。普通の人に...
内臓なんて綺麗なものじゃあないかと言えば皆一様におかしな顔をした。普通の人には理解できない感覚ですかねえと適当に笑ってやるとそうだおかしいのはお前のほうだと返ってきた。反論はせず適当な笑みのまま話を終えた。本当はおかしいのはあなたたちのほうだと思っていた。
内臓なんて綺麗なものだ。
これでもまだ言葉を控えたほうなのにああまで眉を顰められるとは心外だ。
素のままの内臓のほうが人の内面よりも余程綺麗ではないか。
そう言いたかった。
彼は真実思っていた。お綺麗に腹黒く笑う面の皮一枚剥がせば皆見分けもほとんどつかない骨と肉の塊だ。だけれどもそのほうが薄く作り笑いを浮かべる端正な顔よりも大層美しい、何故皆そう思わない? それが彼は不思議だった。
本当に、そう思っていたのだ。
笑う。
脳天気な顔で笑う。
世界の全ての罪悪を背負わされたかのような重圧など知らぬ顔で、はなく、重圧と知ってなお、笑うそれは諦めか悟りか自己犠牲。どれも違う気がした。
壊れかけの世界にも陽は降り注ぐ。蜜の色をした陽光を浴びてきらきらと短くなってしまった髪の輪郭をきらめかせながらそれよりもきらきらと笑う。あたたかい陽に少しでも近づこうというように手を伸ばし透ける緑の梢をきれいだと笑い青い空とそこをゆるゆる流れていく雲をきれいだと笑う。
みんなしあわせになれたらいい。
誰にともなく呟いたそのことばを聞いたとき
無性に、無性にその笑顔がいとおしいと
そうやってずっと笑っていられたらいいのにと、思えた。
笑顔なんて薄皮一枚 腐った中身を取り繕うためだけに存在するものだと信じていた筈なのに、今でも確かに他の人間が笑うのを見て心動かされることなどけしてないのに 何故だろう? 阿呆な餓鬼のような腑抜けた笑顔がもうすぐこの世界のどこからも消えてしまうのがとても悲しかった。それを惜しいと思った。
光の真ん中で図体だけ少し大きな子供は笑う。
無邪気に、だけれどもそれは無知がゆえに無邪気ではなく、腹に飲み込んだ悲しいことも辛いことも隠すために笑っているのだと知っている。
笑うたび 信じたくなる。
ひとが笑うのは汚いものを覆い隠すためではなく しあわせだから しあわせになりたいからなのだと。
美しいのは皮一枚引き剥がした肉の塊ではなく 生きて動いて目の前で笑う姿だと。
もう一度信じてみたくなる。
失われるとわかっているものを。
それは ただの儚い幻想で 絶望の序奏だと 誰かがどこかで嗤う。
だけど 世界にあるのは絶望ではなく希望なのだと 彼がすぐ側で笑う。
さあ どちらを 信じよう?
こたえなど探すまでもなく。
友達からの萌え電波を受信して30分ほどの超特急で書いた代物
ジェイドは人として軸がぶれている感じがうちのサイトの仕様になりそうな予感がします
November 11, 2007
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