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雪白

アサプリのようなもの 暗い短いどうしようもないorz

 
 

 雪が、止むのはいつとも知れずにひたすらに降っていた。多分寒いんだろうと思う。だが、積もった雪の上に投げ出された腕にも脚にも身体にも、もはや震える力さえ残されてはいなかった。
 目が霞む。それでも、雪の白を、流した血がひたすら朱に染めるのは、どこまでも鮮やかだった。
 横で自分と同じように倒れている相手の名前を呼ぶ。返事は無かった。指先に少しだけ触れるその頬には、かすかな体温が残されていた。だが、それは、生きている者の熱というには余りに頼りなさすぎることを、かつては人殺しに手を染めていた彼は、嫌と言うほどよく知っていた。
 黒い法衣をまとった亡骸に積もった雪が、薄朱い。それすらも、もうしばらくすれば、積もった雪に覆い隠されるだろう。
 彼は目を細めた。それは笑みの形だった。
 置いていかれたくないのだと、口癖のように繰り返していた。ほんの少しの間だけでいい、自分より長く生きて欲しいと泣いた。その願いを、自分は叶えられたことになるのだろうか。細い息を吐きながら、彼はどこまでも雪が落ちてくる空を見た。
 当たり前のように人を殺して、殺して、そのことにただ慣れていた。体温はただの温度だった。自分のものでもそれは同じだった。呆れるほど簡単に手放せる、どうでもいいものだった。だから自分は、殺されるところを助けられたことではなくて、もっと何か、別のものが、たまらなく嬉しかったのだろうと、彼は思った。
 雪はとどまらず空から落ちる。
 花もない、冬の森は、どこまでも静かだった。
 
 笑った顔も、怒った顔も、泣いた顔も、全部覚えているよ。
 全部好きだったよ。
 
 君を守って逝った、君の大切な人ほどに、自分は強くはなかったから、君を死なせてしまったけれど。
 君より先に、死なないでいられて、よかった。
 
 痛みも寒さも、どこか薄皮一枚隔てたように鈍い。
 感覚が薄れた皮膚には、踏み固められていない雪はやわらかいだけのものだった。そのやわらかさに、指先が触れている冷たい頬を重ねながら、ああ、でも、と、彼は思う。
 願いを叶えられたのだとしても、やはり、守れなかったことは、酷く悔しかった。
 そしてその悔しささえも、次第に消えていく感覚と共に薄れた。
 
 ゆっくりと、見えているものの輪郭が呆けていく。雪も空も視界を切り取る暗い緑のもみの木も、全部真白にかすんだ。
 相変わらず、自分が世界に別れを告げることは、彼にとって、大して悲しくも苦しくも恐ろしくもなかった。ただ、自分の隣で静かに横たわる人にさようならを言うことが、相手がすでに亡骸であっても、どうしようもなく、名残惜しかった。

 
 
 
 
 
 
 

アサプリ…ぽいもの…

 
July 6, 2005
 
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